Move arts Japan “IN ACTION” OPENCALL AIR Program 2017

審査結果発表

Move Arts Japan Artist-in-Residence Program 2017で活動する今年度の招聘アーティストが決定しました。
第二回目の今年も、昨年度第一回目のOpen Callに引き続き、多数のご応募を応募者の皆様よりお寄せいただき、誠にありがとうございました。世界43カ国より61名の応募があり、厳正なる審査の結果、以下の1名が選ばれました。

アナヒタ・ラズミ (ドイツ出身、1981年生まれ)

受賞に寄せて

私は Move Arts Japan 2017 プログラムにて日本を訪れることに対して非常に興奮しています。この機会は、全国の様々なアートスペース、レジデンス、文化的生産者を知るためのユニークな枠組みとチャンスと捉えています。日本滞在中のリサーチでは、日本におけるイラン移民の具体例を参考にして、日本の移民文化の側面を研究することを目標としています。
 イラン人は、日本に在住の外国人の割合の中でも、1.8%と少数派にとどまっています。この状況は、1990年代初頭までは現在と異なる状況でした。イランとイラクの戦争を逃れ、日本のバブル経済へ避難場所を探しに、多くの違法イラン移民が1980年代に著しく増加したためです。バブル崩壊後、大多数のイラン人労働者が日本より追放され、日本でのイラン人の数は毎年急速に減少していきました。
 この一時的なイラン人の移民ブームの痕跡は、今日も日本にはまだ存在しているのでしょうか?その時代の目撃者ではないにしても、日本とイランの小さな「ハイブリッド・カルチャー」を想像できるでしょうか?これに対する異なる前提条件と可能性は、国内のさまざまな地域で、どのように発見することができるでしょうか?
 今回のプロジェクトでは、これらのリサーチと相互交流に焦点を当てながら、視覚的な物語を発展させることを目的としていく予定です。

選出作家プロフィール

流用、翻訳、再現:ベルリンを主な活動地域とする、イラン人としてのバックグラウンドを持つアーティスト、アナヒタ・ラズミ/ Anahita Razmi ( www.anahitarazmi.de)の作品は、文化と場所の移動を基軸として展開している。国家的および文化的意義のあるオブジェクトの使用や、重要なアーティスト作品の引用を行うアート・プロジェクトでは、輸入/輸出と、貿易の条件、パラメーターの使用と誤用、一般的なグローバル・イメージと貿易のロジックの転換を可能にすることに挑戦している。
一つの場所から別の場所へ移動する際に、身体とアイデンティはどのように変化するのだろうか?また、この中で『ブランディング』という言葉は何を意味するのだろうか?ラズミの作品は、映像、インスタレーション、新しいメディウム、そしてパフォーマンスといった媒体を中心としており、東洋と西洋の間の、視覚的な記憶、固定観念、政治情勢と基準についてを再考する。イランの現在の政治的、社会的な状況と関係に、オープンかつアンビバレントな主張を投げかけている。

2015年には、Erich Hauser FoundationのWerkstattpreisを受賞(ドイツ、2015)、京都のゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ・鴨川の招聘アーティストに選出された(日本、2015)。その他のレジデンス滞在や受賞経験として、MAK-Schindlerのアーティスト・アンド・アーキテクツ・イン・レジデンス・プログラム、(ロサンゼルス、2013)や、ロンドンのフリーズ財団のThe EMDASH Award(ロンドン、2011)などが挙げられる。彼女の作品は、国際的に広く展示されている。

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公募審査について

公募審査に関しましては、鷲田めるろ氏(金沢21世紀美術館 キュレーター)、中村政人氏(アーツ千代田 3331 統括ディレクター)の2者で最終審査を行い、アーティストを選出いたしました。
招聘アーティストは11月1日(水)に来日し、12月22日(金)までの51日間、日本にてMove Arts Japan Artist-in-Residence Program 2017に参加します。

2017年度の選考結果についてのコメント

Anahita Razmiさんは、日本におけるイラン文化をリサーチ対象にしている点が興味深い。1992年まで続いたイランとのビザ免除の観光協定が廃止されるまでは、多くのイラン人が日本に滞在していた。現在も中東問題は、緊張感が続いているが、日本国内ではそのリアリティがあまり感じられない状況である。その意味もあり、Anahita Razmiさんのレジデンス滞在型プログラムによるリサーチ計画は、日本に埋もれてしまっているイラン文化に光をあてる貴重な機会となる事を期待したい。

−中村政人 (アーツ千代田 3331 統括ディレクター)

滞在先での調査に基づき作品を制作するという多くの応募のなか、ドイツで美術教育を受けたアナヒタ・ラズミは、最終的なアウトプットとして、美術の歴史を踏まえた、しっかりとした作品に仕上げることができる力を持つと感じた。イラン文化が日本でどのように見られるかという切り口も明快である。日本の地方都市でのイラン文化の調査は、それぞれの街の意外な側面を示す可能性がある。滞在先は応募案の計画よりも絞った方がよいだろう。

−鷲田めるろ (金沢21世紀美術館 キュレーター)

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